■ スーパーマグネトロン ミニ講座 ■
- supermagnetron plasma mini lecture -

dot 第8回 【物作りと芸術】 dot

芸術を理解するのは難しい。
一見、又は一聞して「良い」と分かるという事は、それを享受する側に創作者の心理と共鳴するものが有るという事だ。 しかし一般的に、独創的な作品を一見して理解するという事は難しい。
芸術は、作者が長い間かかって試行錯誤し完成させた世界で唯一の心理描写である。 もし多くの人が同時に一見して理解できる独創作品が作り出されたとしたら、それは所謂「発見」の概念に近い。 しかし、長い間理解されない芸術作品をというものは、裏に返せば芸術としての独創性が深遠であるとも言える。 異端な芸術と呼ばれる数々は、長い時を経て人類の美的感覚を研ぎ澄まさせてきた。 科学技術も「独創」によって進化してきた。 その点で芸術と呼ばれるものと似たような要素を持っている。 しかし改良、成熟の過程は往々にして「技術」の発展によって支えられている。

スーパーマグネトロンプラズマは、そのプラズマプロセスの新規性を追求して創り出された独創的なプラズマである。 10年以上スーパーマグネトロンプラズマの研究を行なっているが、誰一人として追随して来ないフィールドである。 研究すればするほど、分からない謎が浮かび上がってくる。 何故こんな複雑なプラズマに挑戦してしまったのだろうか、とも思う。 つまらない物真似のプラズマであったら、とうの昔に研究を放棄していたかもしれない。 ただ、誰一人追随して来ないからこうして未だ孤独な探求が続いているわけである。 スーパーマグネトロンプラズマでのみ可能なプラズマプロセスが有る限り、この研究を継続する義務があると感じる。
良いものが良いと認識されるまでには、時間がかかる。 それを成し遂げるに、ただひたすらに追い求め、今までも、そしてこれからも論文を書き続けるだろう。 その論文がもしも「芸術作品」となればそれはこの上ない喜びである。 唯一の研究は孤独である。

Updated last, at 2002-02-15.

ミニ講座編集担当: Miss Kyouto Kawakami
享都ミュージアム: http://soundshade.elac.jp/

…次回へ続く

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